法律の規定に違反していないかチェックしよう
どんな団体でもNPO法人になれるわけではありません。NPO法人になるためには以下の条件をすべてクリアすることが必要になります。
書類作成に入る前に、最終確認として前の12個の手順で決めていった項目が法律に違反していないかどうかをチェックしていきましょう。
- 主たる活動内容はNPO促進法の20分野のいずれかに該当します
- この団体は不特定多数の利益の増進に寄与するために活動します
- この団体は営利を目的としません
- この団体は宗教や政治活動を主目的としません
- この団体は特定の政党や候補者の支援団体ではありません
- この団体は特定の政党のために利用しません
- この団体は特定の団体や個人の利益を目的としていません
- NPOに関わる事業に支障を生じるほどの収益事業をしません
- この団体は暴力団やその関連団体ではありません
- この団体は社員(会員)の資格に不当な条件はつけていません
- この団体は会員が10人以上います
- この団体は役員として理事3人以上、監事1人以上がいます
- 役員総数のうち報酬を受ける者の数は3分の1以内です
- すべての役員は法で定められた欠格事由に該当していません
- 役員のうち親族が3分の1を超えていません
NPO法人を設立するためには上記15項目の問いに対して、すべて「はい」と返答できなければいけません。
では各項目を詳しく見ていきましょう。
1.主たる活動内容はNPO促進法の20分野のいずれかに該当します
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
2.この団体は不特定多数の利益の増進に寄与するために活動します
サービスの対象者が不特定多数に開かれていなければなりません。会員間でしかサービスを提供していない、ということは許されません。これは、サービスの対象者があらかじめ限定されていたり、特定されていたりすると、NPOとしての趣旨からはずれ、単なる親睦団体や互助会になってしまうと考えられるからなのです。
「会員同士で相互扶助的な活動を行っている団体の場合」
この場合、誰もが会員になれるようになっているか・会費等金銭負担が入会の制限となっていないか(入会金等が高すぎないか)、また法人の活動が会員のみを対象としていないかが、NPO法人格取得のカギになります。主たる活動は一般に開かれていて、従たる活動として会員向けのサービスを行っているものなら開かれているといえるのではないでしょうか。
3.この団体は営利を目的としません
最初に、NPO法人と会社(営利企業)との違いを述べておきます。会社は、売上から経費を差し引いて利益が出ると、出資者や従業員に分配することができます(株の配当金や従業員の臨時ボーナスがそうです)。
従業員や出資者は会社が儲かれば利益が配当されるので儲けることができるのです。これが法律上の「営利」という意味です。
NPO法人は「非営利」法人です。なので売上から経費を差し引いて利益が出ても、出資者(正会員)や寄付をして下さった方、従業員に分配することができません(配当金を出すことができないのです)。これが法律上の「非営利」という意味です。
もちろん、従業員は労働に見合った給料をもらうことはできますし、企業と同じようにボーナスももらうことができます。しかし、「本年度は多くの利益が出ているので配当金を出して会員や寄付をしてくれた方に還元しよう」といった事がNPO法人はできないのです。
では、利益はどうなるのか?といいますと、余剰利益は来年度の予算に使われることになります。この利益を設備投資などに使ってもいいですし、さらに次年度の会計に利益を繰り越ししても構いません。
「余剰利益は、会員や寄付者に分配するのではなく、次年度以降にさらに活動の規模を大きくする為に、活動の質を向上させる為に使用してくださいね。そして公益の増進を一層推進してくださいね。」というのがNPO法人なのです。
繰り返しますが、これが法律の上での、営利を目的としない(非営利)という意味です。
NPO法人の正式名称は「特定非営利活動法人」です。「非営利」という言葉が使われているので、無料(又は格安)でサービスを提供しなければいけないと思っている方が多いですが、そんなことはありません。普通の企業と同じように有料でもいいのです。赤字にならないようにきちんと適正な料金をもらって下さい。
事業を展開していくと経費はもちろんかかります。タダでサービスを提供していてはあっという間にこの法人はつぶれてしまいます。
「非営利」の意味は上でも述べているように、「利益を分配してはいけない」ことなのです。NPO法人が財政的に自立していく上では、収益活動が非常に重要になります。会費や寄付金・助成金のみで運営していくことはこの不景気な世の中ではほぼ不可能なのです。
4.この団体は宗教や政治活動を主目的としません
NPO法人は、主たる目的としては宗教活動を行うことはできません。政治活動も主たる目的として行うことはできません。これらの活動のために予算を取ったり、ボランティアの人達を動員するといったことはできません。
5.この団体は特定の政党や候補者の支援団体ではありません
6.この団体は特定の政党のために利用しません
主たる目的として選挙活動を行ったり、特定の政党を応援したりすることはできません。「4」と同じく、これらの活動のために予算を取ったり、ボランティアの人達を動員するといったことはできません。
7.この団体は特定の団体や個人の利益を目的としていません
NPO法人の事業から利益が出たとしましょう。その利益を特定の団体や人物に寄付するということはできません(あらかじめ定款などに「利益は○○に寄付する」と決めておくことはできません)。
もちろんNPO法人が他の団体や企業、個人に対して寄付を行うことはできますが、この場合、総会や理事会できちんと話し合い、「○○だからこの人に寄付します」ということがきちんと説明できなければいけません。
8.NPOに関わる事業に支障を生じるほどの収益事業(その他の事業)をしません
収益事業はあくまでも本来の目的である非営利事業の補完的なものでなくてはなりません。ですから非営利事業全体の支出総額を上回るような活動はできません。もし上回るようなら、NPO法人ではなく、会社にするように所轄庁から指導されます。
9.この団体は暴力団やその関連団体ではありません
NPO法人は法律で暴力団に関連する事柄を徹底的に排除しています。暴力団がNPO法人を隠れ蓑にすることを避けるためです。
10.この団体は社員(正会員)の資格に不当な条件はつけていません
一応、定款で「理事長は正当な理由がない限り、入会を承認しなければならない」という文句を入れておけば、正当な理由があれば入会を拒むことはできます。
ただし、「この人は嫌いだから入会させたくない」
「女性だから」
「子どもだから」
「年を取っているから」
という理由では正当な理由にはなりません。
入会制限をつけるとするならば、入会するための条件をつけることが、団体の活動目的や事業内容との関係から見て、一般的に許されるか? ということが判断材料とされています。
11.この団体は会員が10人以上います
社員(正会員)が10名以上いることがNPO法人の設立要件なので、絶対に10名以上の社員が必要です。
ただし、社員には親族規定などの規定は一切ありませんので、お父さんやお母さん、子供、おばあちゃんなど身内を10人正会員にしても、一応NPO法人は設立することができます。
12.この団体は役員として理事3人以上、監事1人以上がいます
役員として理事が3名以上、監事は1名以上が絶対条件です。役員の上限は決められていませんので何人でも置くことはできます。
13.役員総数のうち報酬を受ける者の数は3分の1以内です
役員のうち、役員報酬を受け取ることができる人数は、役員総数の3分の1以内です。よって、
・役員が4人ならば役員報酬を受け取れる人は1人だけになります。
・役員が6人いるならば2人まで役員報酬をもらえます。
・役員が20人いれば6人まで役員報酬をもらうことができます。
NPO法での「役員報酬」とは、全く働かなくても定期的(毎月・毎年など)に報酬がもらえるものを指します。役員でもきちんと働いていればその対価(給料)として金銭を得ることはできます。
労働の対価として受け取る場合、これは「給料」であり、「役員報酬」ではありません。なので、役員報酬をもらう理事がきちんと働いていれば、「給料」と「役員報酬」両方をもらうことだってできるのです。
時々、「理事が全員職員として働いているが、それでも役員総数の3分の1しか報酬を取れないのか?」という質問を受けますが、この場合、全員「給料」としてもらうことができます。(役員報酬の支給者はゼロとなります)
ちなみに、役員報酬や給料の支給額の上限はありません。その法人の資金の量や特定非営利活動に係る支出とのバランスなどにあわせて考えてください。
ただし、あまりに役員の給料や役員報酬が高すぎるというのは、NPO法人の理念から離れてしまいます。たとえばある役員の年収が年間5000万円もあるとなると、NPO法人としてどうでしょうか。利益の分配と見られてしまう可能性大です。
しかしながら、今のところ法律でもその辺の規制については明文化されておりませんので明確に違反とは言い切れません。所轄庁の判断次第というところでしょうか。
なお、世間一般的な役員報酬でも、法人の資産規模に似合わない役員報酬を設定し、役員報酬が高額すぎて法人の運営を圧迫しているという状態は当然認められません。注意してください。
14.すべての役員は法で定められた欠格事由に該当していません
以下のいずれかに該当する人はNPO法人の役員になれません。- 成年被後見人又は被保佐人
- 破産者で復権を得ないもの
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 特定非営利活動促進法の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 第204条(傷害罪)、第206条(現場助勢罪)、第208条(暴行罪)、第208条の2(凶器準備集合及び結集罪)、第222条(脅迫罪)、第247条(背任罪)の罪を犯したことにより、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 暴力団の構成員(暴力団の構成団体の構成員を含む。)若しくは暴力団の構成員でなくなった日から五年を経過しない者
- 設立の認証を取り消された特定非営利活動法人(NPO法人)の解散当時の役員で、設立の認証を取り消された日から2年を経過しない者
15.役員のうち親族が3分の1を超えていません
役員総数のうち、3親等内の親族が3分の1を超えて含まれていてはいけません。よって、役員が最少人数の4人ならば、どの役員も3親等以内の親族を役員に入れることはできません。役員が6人いるならば3親等内の親族が1人だけ入れることになります。
次のページは、
NPO法人設立認証を申請するには、このwebサイトで説明しているように、非常に多くの書類を作成しなければなりません。設立認証だけでなく、その後の手続など、とにかくNPO法人を設立するとこれから先は書類との戦いが始まります。
もちろん、書類の雛形は、所轄庁(都道府県庁又は政令指定都市の市役所)に「NPO法人の手引き書下さい」ともらいに行けば簡単に手に入りますし、所轄庁によってはwebサイトから手に入れることもできます。
しかし、手慣れた人が書類を作成・準備するのならともかく、はじめての人が一からすべて間違いなく、しかも短時間でそろえることは、大変骨の折れることです。というよりはっきり言って不可能です。
苦労して書類を一から作り、役所に何度も手直しをさせられて、やっと設立が認められたNPO法人というのも、「自分が設立した」という愛着が湧き、いいとは思いますが、このHPを見られている方は「NPO法人を作ること」が目的ではないはずです。NPO法人で事業を興すこと・社会貢献を行うことが本来の目的ではないでしょうか? NPO法人の申請に時間をかけるならば、設立後の活動準備に時間をかけた方が設立者・そしてそのサービスを受ける消費者にとっても利益となると思われます。
そこで、弊事務所では、申請書類の認証申請手続きはもちろん、設立後の届出、法務アドバイス、記帳会計代行など設立代表者様の負担を少しでも減らせるように、各種サービスを提供しております。また、NPO法人は設立後も様々な書類を提出しなければいけません。所轄庁から行政指導を受けないように、健全な運営を行っていく上でのコンサルティングも行っております。是非、ご利用ください。
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日本実業出版社の「経営者会報」に4ページにわたり弊社が掲載されています。
女性起業家や起業家のたまごなど、頑張る女性を応援するマガジン『Born to win』に掲載されました。
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