Q.「社員(正会員)の入会制限はできません」との事ですが、入会を断れないということですか?
A.社員(正会員)はNPO法人の総会で議決権を持つことになります。
NPO法人の総会は、
- NPO法人の役員(理事及び監事)の選任権 や
- NPO法人の運営上重要だと思われる事項の決定権
NPO法人の社員の議決権は株式会社のように「出資した金額(株数)に応じて議決権が与えられる」というものではなく、一人1票ですべての社員が平等に議決権を持つことになります。
よって、- 「見知らぬ人が社員(正会員)として入会したら、自分達の意見が通らなくなってしまう可能性がある」
NPO法人の所轄庁からは「合理的な理由があれば正会員の入会制限はできます」という回答をもらってはいますが、その『合理的な理由』を見つけることが非常に難しい。というより不可能に近い。いや、不可能だと言い切れてしまうかもしれない。
上で述べたように、社員(正会員)の定義は、- この法人の目的に賛同して入会した個人及び団体
のことなのです。そのNPO法人の活動に参加する人のことではありません。法人の職員になる人のことでもありません。あくまで、趣旨に賛同してくれた人のことなのです。
例えば戦災地や自然災害の被災地で医療行為を行うNPO法人があったとしましょう。医療行為という人命に関わる高度な技能が必要とされますので、実際に活動する方は医師や看護士など医療従事者に限られてきます。よって、活動に従事する方の条件は法人の好きなように設定できます。
しかしながら、一般市民から「その団体の趣旨に賛同した。入会金・会費は負担するのでぜひ正会員にしてほしい」という要望があった場合、よほどの事情(※)がない限り入会を拒むことはできません。
「あなたのNPO法人の趣旨に賛同した。入会することであなたの団体を支えていきたい」
この想いを持つことに「資格」や「性別」「技術」「能力」は関係ありません。よって、社員(正会員)の入会に制限を加えることは実質認められないのです。
ちなみに入会制限が認められるのは年齢ぐらいでしょうか。
かといって、好き勝手に条件を付けられるわけではありません。
- この法人の入会金・会費は高額なので、その金額が個人で負担できる20歳(18歳)以上を入会の条件にしよう
- NPO法人の意思決定に携わるわけだから、物事を自分で決定できる(法律上の契約を行える)20歳以上を正会員の対象としよう
NPO法人の社員(正会員)の入会制限は原則できない、と考えておいてください。
「どうしても他人に議決権を持たれたくはない」
こうお考えの団体はNPO法人の設立・運営には向きません。NPO法人の設立そのものを考え直す必要があります。
※正会員の入会を拒める「よほどの事情」とは?
所轄庁のNPO法人担当者に聞いてみたのですが、
「社員(正会員)の人数があまりに多くなりすぎ、これ以上社員数が増えすぎると、社員の管理や総会の開催ができなくなる状態に陥ったとき」
という答えが返ってきました。会員数が4桁(1000人以上)ぐらいになれば、NPOの事務所や公民館といったレベルでは総会ができないので、入会を拒むやむを得ない理由として市民も納得してくれるのではないか?ということらしいです。
本Webサイトにて設立の流れを説明して参りましたが、NPO法人は他の法人(会社など)に比べて非常に手間と時間がかかります。「一般の人がNPO法人を設立するのには8ヶ月から1年かかる」と言われているのも、上記の決定事項の多さ、書類作成の量を見ていただければ納得していただけると思います。
設立認証だけでなく、登記手続やその後の手続など、とにかくNPO法人をつくるとこれから先は書類との戦いが始まります。
もちろん、書類の雛形は、内閣府や都道府県庁に「NPO法人の手引き書下さい」ともらいに行けば簡単に手に入りますし、都道府県によってはHPから手に入れることもできます。
しかし、手慣れた人が書類を作成・準備するのならともかく、はじめての人が一からすべて間違いなく、しかも短時間でそろえることは、大変骨の折れることです。というよりはっきり言って不可能です。
苦労して書類を一から作り、役所に何度も手直しをさせられて、やっと設立が認められたNPO法人というのも、「自分が設立した」という愛着が湧き、いいとは思いますが、このHPを見られている方は「NPO法人を作ること」が目的ではないはずです。NPO法人で事業を興すこと・社会貢献を行うことが本来の目的ではないでしょうか? NPO法人の申請に時間をかけるならば、設立後の活動準備に時間をかけた方が設立者・そしてそのサービスを受ける消費者にとっても利益となると思われます。
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