Q.このNPO法人には役員が4名おり、全員が常勤職員として業務に携わっています。役員報酬は役員総数の3分の1までしか支給できない(このNPOの場合1人だけ)と法律で規定されていますが、うちのようなNPO法人でも全員に人件費を支給できないのでしょうか?
A.人件費として全員に支払いできます。NPO法人の役員報酬は、
- 「仮に、何も仕事をしていなくてももらえる報酬」
理事の方でも、何らかの仕事を行っているならば、NPO法人の職員と理事を兼職していることにして、「給料(労働の対価)」として法人から金銭の支給を受けることができます。
よって、理事の方が経理をされるならば、その理事には、- 「経理職員と理事を兼職していることにして、経理の仕事を行う労働対価として、給料を支払う」
NPO法人の役員には、
「役員総数の3分の1しか役員報酬を支給してはいけない」
という規定があり、
「そうか。NPO法人の役員は3分の1しか給料を受け取ってはいけないんだ。うちは役員が3名働いていて給料を取りたいので、役員総数を9名にしないといけないんだ」
という勘違いをされている方をよく見かけますが、そこまで役員総数を増やさなくても、実際に働いている理事には職員と理事を兼務していることにして、
役員報酬:0円(支給なし)
職員としての給料:支給する
という具合に、労働の対価として金銭を支給することが可能です。
ただし、監事はNPO法人の職員と兼ねることはできません。
よって、監事の方が業務に携われている場合や監事の方に給料(報酬)を渡したい場合は理事の時のように、
「NPO法人の職員と監事を兼職していることにし、職員給料として支給する」
という方法をとることができません。
監事に人件費を支払いたいならば、監事の方に役員報酬を設定し、毎月一定額を支給していくことになります。
なお、役員に支払う人件費にはもう一つ重要なことがあります。それは、
- 特定非営利活動促進法(所轄庁)と税法(税務署)との間で、「役員に支払われる給料・報酬」について考え方が異なる
特定非営利活動促進法では、役員報酬を、
- 「理事が仮に、何も仕事をしていなくてももらえる報酬のこと。役員手当みたいなもの。理事でも仕事を行っているならば、給料として金銭を受け取ることができる」
- 「役員報酬は、その名称に関係なく役員に支払われたお金のこと。原則として期内の支給額変更は認められない。どうしても変更させたいときは給与規定を作成し、その規定に基づいて変更させるならば、理事長や副理事長、監事等の役付け役員以外は変更できる」
なので、理事長1名、副理事長1名、理事1名、監事1名という役員総数4名のNPO法人があり、全員がNPO法人の職務に常時従事しており、給料を取りたいと考えている場合は、
- 理事長・・・給料として毎月一定額を支給する
- 副理事長(役付き理事)・・・給料として毎月一定額を支給する
- 理事・・・給料として毎月一定額を支給する
又は給与規定に基づいて支給する - 監事・・・役員報酬として毎月一定額を支給する
本Webサイトにて設立の流れを説明して参りましたが、NPO法人は他の法人(会社など)に比べて非常に手間と時間がかかります。「一般の人がNPO法人を設立するのには8ヶ月から1年かかる」と言われているのも、上記の決定事項の多さ、書類作成の量を見ていただければ納得していただけると思います。
設立認証だけでなく、登記手続やその後の手続など、とにかくNPO法人をつくるとこれから先は書類との戦いが始まります。
もちろん、書類の雛形は、内閣府や都道府県庁に「NPO法人の手引き書下さい」ともらいに行けば簡単に手に入りますし、都道府県によってはHPから手に入れることもできます。
しかし、手慣れた人が書類を作成・準備するのならともかく、はじめての人が一からすべて間違いなく、しかも短時間でそろえることは、大変骨の折れることです。というよりはっきり言って不可能です。
苦労して書類を一から作り、役所に何度も手直しをさせられて、やっと設立が認められたNPO法人というのも、「自分が設立した」という愛着が湧き、いいとは思いますが、このHPを見られている方は「NPO法人を作ること」が目的ではないはずです。NPO法人で事業を興すこと・社会貢献を行うことが本来の目的ではないでしょうか? NPO法人の申請に時間をかけるならば、設立後の活動準備に時間をかけた方が設立者・そしてそのサービスを受ける消費者にとっても利益となると思われます。
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